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Posted by んだ!ブログ運営事務局 at

2012年03月19日

1年後の震災レポート 2

大槌町にはいってガソリンを入れた。店舗もない野ざらしのスタンドだった。少し値段が高いな、と思いつつもふと見たら、大槌町役場の目の前だった。時間が気になって役場をみたら時計がある。4時15分を指していた。「おや?」と思いつつも写真を撮りながら歩いていると別の建物では3時ちょっと前を指している。釜石に入ったのが11時ちょっとすぎたくらいだったから3時や4時というのはあり得ないのだが、天候のせいもあって妙に説得力があった。
旧大槌町役場の前を通り墓地がある小高い丘の上にいったとき、ひょっこりひょうたん島のテーマが流れてきた。そこで、今が12時であることに気がつき、愕然とした。あの時計は、単純に止まっていたわけではない。大槌町の時間が止まっていたのだ。
そしてひょっこりひょうたん島のテーマは「シャレにならない」と感じた。小さな島は津波に弱いだろう、という先入観があったからだ。しかしあとになって歌詞をよくよく考えたとき、その考えが間違っていたことに気付いた。
……………………………………
ひょっこりひょうたん島  井上ひさしほか作詞 宇野誠一郎作曲

波を ちゃぷちゃぷ ちゃぷちゃぷ かきわけて
(ちゃぷ ちゃぷ ちゃぷ)
雲を すいすい すいすい 追い抜いて
(すい すい すい)
ひょうたん島は どこへ行く ぼくらを乗せて どこへ行く
ウーー ウーー
丸い地球の 水平線に 何かがきっと 待っている
苦しいことも あるだろさ 悲しいことも あるだろさ
だけど ぼくらは くじけない 泣くのはいやだ 笑っちゃおう
進め
ひょっこりひょうたん島
ひょっこりひょうたん島
ひょっこりひょうたん島
……………………………………

この歌は、苦しいことや悲しいことが起こることは否定していない。
ただ、それに対してくじけないぞ、泣くのはいやだから笑ってしまおうという歌詞だ。
とまっている時間を動かそうという決意のあらわれなんだ、と思った。
地震後、「頑張ろう」「負けないぞ」という言葉が盛んに言われた。
けれど大槌町の人たちが選んだ、時を告げる歌にはいっているのは、「頑張ろう」なんて言葉じゃない。「負けない」なんて言葉じゃない。
頑張るとは「頑なに張る」と書く。頑なに張り続けたら最終的には破れてしまう。破れたあとはどうすればよいのだろう? それに対して「笑い」はゆるみから来る。「頑張り」とは根源的に対照的な言葉だ。
「負けない」とは勝負の対象があって初めて成り立つ言葉だ。そして勝負事には必ず「終わり」がある。「終わり」のない勝負など、勝負していないに等しい。「負けないぞ○○」というステッカーを張った車を何台も見たが、「終わり」にたどりついたその先はどうするのだ? そもそも何をして勝ったと言えるというのだ? そしてもし「負けてしまった」らどうするのだ? このように「勝ち」「負け」などの言葉を使うと非常に気持ちを縛ってしまう。「くじけない」という言葉はそんな終わりのある言葉ではないし、対象があるわけでもない。ただただ、苦しみや悲しみが来てつまずいても、また立ちあがれるんだということである。
なんとステキな選曲だろう!!

ただ、ひとつ。
今はまだ、つまずいていてもいいんじゃないか。無理して笑わなくてもいいんじゃないか。大声で泣いてもいいんじゃないか、と思った。
皆がみんな、同じ時期に立ちあがれるとは限らない。もう泣くのはいやだと思えば笑えばいいし、まだ立ち上がれない人は泣いていてもいいと思う。
津波被害にあった地域はそれだけ、まだまだ時間の進みが遅いということだ。(「復興」という言葉も嫌いなのでこう言う表現になる。)

車を進めながら、「支援ありがとうございました」という看板をよく見かけた。
この看板にオレはがっかりした。
日本では「厚意を受けたら感謝の言葉を述べる」ことが過剰になりすぎていると思ったからだ。
この目で見た限り、どのパターンの「被災地」も支援を受けて「当然」のダメージを負っている。彼らだけで「復興」などとうていできない話だ。
だから、そこは持ちつ持たれつであって、次にどこかで災害があり、かつその時に自分たちに余裕がある場合に、支援をすればいいことである。「ありがとう」という言葉がなければ、支援ができないというのであれば、それは見返りを求めるものでどこかギスギスしたものになってしまう。
「被災地」は「ありがとう」を言わなくていい。堂々と支援を受けてほしい。
そもそもまだ「ありがとうございました」と言えるほど「復興」してないじゃないか。

それぞれの「被災地」には、時間を進めようという動きがある一方、まだまだ、立ち上がれない人も多い。そういった人たちに「もう泣くな」とか「支援ありがとうございました」という言葉は切り捨てに近いものがあると思う。
被害を受けた方々に、ゆっくり、時間をかけて
「だけど僕らは くじけない」
と思うことができるような環境を整えていくことが必要だと思った。
(続く)  


Posted by はぬる at 17:20Comments(0)雑感・いろいろ